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4 百年墨絵入り食器棚・台湾ヒノキ
Ink-Painted Kitchen Cabinet - Taiwan Hinoki
こちらは、台南・下營から届いた百年の歴史を持つ墨絵入りの食器棚(菜櫥/ツァイツー)です。素材は台湾ヒノキ。四世代にわたって暮らしのそばにあり、家族の日常を静かに見守ってきました。
お預かりした時点では、木材全体が深刻に風化し、湿気によって接着が剥がれ、底板には亀裂、引き出しは腐食しており、一部は開閉も困難な状態でした。墨絵は数カ所にかすかに残っていましたが、表面の劣化が著しく、すべてを残すことは不可能と判断されました。
そこで、依頼主様と何度も相談を重ねた上で、可能な限り当時の意匠を尊重しながらも、修復不可能な部分は丁寧に取捨選択する方針を取りました。最終的には天然塗料で仕上げを行い、墨絵や木目が見える部分を残しながら、日常で再び使えるように再生しました。
この家具は、ただの懐かしい道具ではなく、家族の記憶を受け継ぎ、これからも暮らしの中で息づいていく存在となりました。
初期状態
木材は深刻な風化と湿気の影響を受けており、構造の緩みや腐食が見られた。
墨絵の図柄は一部が剥落・不鮮明となり、全体の構図を判別できない状態。
引き出しは破損し、底板には亀裂が入って使用不能の状態だった。
修復のポイント
解体後、全体を乾燥させた上で構造補強を実施し、台座と枠組みの安定性を確保。
天然塗料で残存する墨絵を保護し、損傷部分を丁寧に取り除くことで全体の美観を維持。
棚板および引き出しの底板を新調し、実用性を回復しつつ、当初の意匠を損なわないよう配慮。

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