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1 修復の第一歩 - 榫継ぎの分解

細部にこそ、悪魔が潜んでいる。

私たちの修復工程において、「分解」は単なる最初のステップではなく、全体の品質を左右する最も重要な工程です。

時を重ねた家具には、古びた塗膜だけでなく、汚れや虫食いが榫(ほぞ)とほぞ穴の奥深くにまで忍び込んでいることがあります。もし分解せずに表面だけを粗く削るだけでは、内部の汚れは残り、仕上げ塗装の美しさも損なわれてしまうのです。

そのため、私たちはまずひとつひとつのほぞを丁寧に外し、番号を振って正確に分類します。すべてのパーツが自分の「居場所」を持てるよう、整理された作業台の上で、サンドペーパーを木目に沿って粗目から細目へと段階的にかけながら、何度も繰り返し磨いていきます。

表面がまるで初雪のように滑らかになるまで、焦らず、急がず、じっくりと。木がもう一度「呼吸」できるようになるその瞬間まで、根気と繊細さが求められる工程です。

すべての部材が清らかに整ったあと、再び組み立てるときには、どのほぞもぴたりと噛み合い、構造に無理がありません。そして仕上げには、刷毛やスプレーで手作業にて塗装を施し、ムラのない美しい塗膜を与えます。

この丁寧で穏やかな時間の積み重ねこそが、ただ外観を復元するだけでなく、木がかつて持っていた「時に愛された温もり」と「命の手触り」を呼び戻すための、大切な工程なのです。


修復・榫継ぎの整備工程|要点

① 分解とマーキング各部材を一点ずつ分解し、番号を付けて管理。部品の配置と構造を正確に把握し、再組立時のズレを防止します。

② 隙間の清掃細いブラシやエアブローを使用し、榫継ぎの奥に入り込んだホコリや汚れを丁寧に取り除きます。

③ 研磨処理粗目から細目のサンドペーパーで段階的に研磨。木目を傷つけず、滑らかな触り心地を回復させます。

④ 欠損部の補修経年で摩耗・欠損した部材を、元の形に近づけて補修し、構造の安定性を保ちます。

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